竿を伝わって根に擦れているのが解るようである。
あの嫌な感じ。
何かズリズリとするあの感覚。
何度も経験したなぁ。
正に真剣な表情で、SYUUは耐えていたが、その方向を変えられる事もなく、更に奴が走って行った。止まった感もあるが、バタバタ動く感じが伝わってくるらしい。
「イソンボではないなあ!」
「うーん。」
静寂から一気に騒然となるこの釣座が、なんとも踏ん張っているが・・・・。
言葉にならない緊張に変わる。
こいつが本命かどうか解らないけど、かなり強烈な引きを堪能する余裕は全くないSYUU。まさにその姿がそこにある。
彼の顔が真剣かつ紅潮しているのが分かった。耐えるしかなさそう・・・そんな感じであった。暫くすると、魚は止まったように思えた。彼は、その先にバタバタと暴れる奴がそのラインの先から伝わっているのが解る感じで、余裕がなさそうではあるが分析はしっかりしている様子だった。
「ああっ・・・・!」
「切れた!」
耐摩耗ラインが切れた。
その擦れた感じの中で何時切れるか解らない恐怖が、その結末によってはその恐怖からの解放には繋がったが、その代償は、落胆と言う大きな遺産が待っていたのである。
一体その先には何が付いていたのであろうか。
ラインブレイク(糸切れ)と言う事葉は、いつも悲しい。釣人にとって悲しい出来事のトップである。その歴史の中で、テグス切れと呼ばれて以来、釣師、漁師であればどれだけ悔しい思いを先人達はどれほど多く経験したのであろうか。一本の糸で繋がる事は、その事自体が一瞬で全てを失う事になる。それは案外、人の道もそうなのではないかと思ったりもするのである。幸いな事に、それはやり直しが利くと言う事であるが、備えが無ければ次のチャンスがない。それも人生と同じなのかもしれないと思った。チャンスは、一様に皆に回って来た事になる。
その結果は、別として。
それからまた我々は、俄然やる気が出てきて頑張った。
しかし・・・それから後はチャンスが再び訪れることは無かった。
それでも、全員の帰路の足取りは重くは無かっただろう。何せ、ドラマは訪れてそれなりの結果をもたらしたからのだから。また“明日頑張れば良い”と言う気持ちも多分にあったのであろう。その明日への期待は膨らむばかりであった。
誰でもその希望と言う名の希望を奪う事はできない。
誰であっても・・・。